[釋永陽陶芸工房]釋永 陽Yo SHAKUNAGA
日々の暮らしに寄り添ううつわ
越中瀬戸焼の魅力について
上末地区には古い窯跡が点在しています。幼少期、父に連れ立って森に入り、古い陶片を拾っては立ち止まり眺める父の傍で、私にも何か掘り出し物がないものかと子どもながらに目を凝らして歩いたものです。
ある時、用水工事の作業現場に、真っ白な粘土層が剥き出しになっているのを見つけました。
その白さ、触ってみた時の粘り強さに「これが粘土なのか」と心震えたのを今でも鮮明に思い出します。
一口に越中瀬戸焼と言っても、時代によって求められ方は変化していますが、この地に住まいし陶芸に携わってきた人々はごく自然に地元の陶土や釉薬の原料になる素材を用いて作陶していました。初めからそこに在ったから…というのは当たり前のようでいて、なかなか整えることの叶わない贅沢な制作環境だと思います。
製作時に心がけていることや、
作家としてのテーマを教えてください。
陶芸を生業とする父を見て育った私は、自ずと手でものを生み出す面白さに興味を持ちました。
土を掘り出して水と攪拌し、細かな砂や木の根っこを篩にかける土作りの作業は、地味ながら陶器づくりには欠かせない要の時間。轆轤にのせる前にちょっと時間を有しますが、丁寧に目配りしたい作業です。
この仕事を志し一通りの工程を覚えてからも、土作り、釉薬作り、轆轤、窯焚きとどれ一つをとっても完璧にはこなせません。それがまた面白さではありますが、経験や知識に縛られず柔軟に自分の作品作りに生かせるよう精進していきたいと思っています。
立山町での暮らしの魅力
私の暮らしている虫谷は、東谷地区のちょっと奥まった場所にありますが、とても美しい棚田に囲まれています。
集落を抜けてもう少し山へ入ると、知る人ぞ知る岩室の滝があります。いつ訪れても期待を裏切ることのない瀑布の水音、滝壺の辺りに潜む空気感、大きな岩盤には一部柱状節理が見られ見飽きることがありません。
子供を連れてすぐ近くの公園でピクニックするのが定番ですが、大人は自然の中で休息できますし、息子は思いっきり虫捕りに走り回り、最高の時間を過ごすことができます。これが特別なわけではなく、ごくありふれた立山町の子育てスタイルの一つではないかと思います。
釋永陽陶芸工房からの
メッセージ
2014年に夫と息子と立山町の虫谷地区へ引っ越しました。
集落には14軒の民家と八幡社があるだけ。住人よりも群れで押しかける猿の方が多いとても長閑な場所です。その虫谷地区にあった築80年の古民家を自分たちで改修して暮らしています。大きな母屋と二つの納屋をそれぞれ夫の和紙工房、そして私の陶芸工房へと生まれ変わらせました。
2018年には娘が誕生し、毎日の食卓はとても賑やかです。その日の料理にあったうつわを子どもと選んで盛り付けたり、使いやすいサイズを見極めたりと、ごく普通の家族のごはん時間が豊かなものになるよう、これからも丁寧にうつわを作っていきたいと思っています。